2005年12月10日

治験におけるデータ捏造(1)

実は治験におけるデータ捏造は、そう難しくない。
やろうと思えば、やれる。

ここで、その方法を書くのはまずいので書かないが、治験のデータは捏造しやすいデータだと思う。

最も悪質なデータ捏造としては、架空の患者さんを作り、その人のデータを作ってしまう、というやつだ。

だから、『本当に、その患者さんが実在する人かどうか?』というのは、ケッコウ、大事なSDVの目的の一つだ。
しかし、その『実在するかどうか』ということをモニターが証明するのが、これまた難しいのだ。

第一に、モニターは治験参加者と直接、話すことを許されない、という考えがある。

これは治験参加者のプライバシーの保護や人権、或いは、それこそ、データ捏造になりかねないからだ。

治験参加者が実在するかどうか?
これは、どうやったら、証明できるのだろうか?


治験参加者が実在する本当のデータなのかどうかを、どう証明するかの前に、どうしてデータ捏造が発生するのかを考えよう。

まず、治験責任医師は治験依頼者から、治験参加者1名につき、50万から100万円(或いはそれ以上)の費用がもらえる。
この金額の妥当性は病院内に設置される治験審査委員会(IRB)で審査される。
この費用は国公立の病院場合、治験責任医師に直接支払われず、病院に一旦支払う。(国公立の病院の医師は治験は「公務」として、見なされるからだ。)

一方、私立の病院の場合は、基本的にはどこに支払うことも自由なのだが、やはり治験責任医師に直接支払うことは滅多に無い。
大体、医局や病院に支払う。

個人経営のクリニックの場合は、クリニックに支払うと言っても、個人経営なので、直接、医師に支払われるようなものだ。

さて、この治験参加者1名につき支払われる費用は、国公立の場合は「前払い」だ。
例えば、8人の治験参加者を予定して契約すると、8人分を前納する。
もし、実際には4人しか治験参加者が集まらなくて、そのまま治験が終了しても、残り4人分の費用は戻ってこない。
(国庫にお金を入れるのはたやすいのだが、一度、国の金庫に入ったお金を出すのは大変らしく、それはできないということで、今まで、治験依頼者はそれで納得していた。 でも、よく考えるとサラリーマン・ウーマンの場合、年末調整が有るよね。どうして、あれはできるのに、治験の場合はできないのか、よく分からない。)

国公立、私立、個人経営にかかわらず、治験をやると治験参加者の人数に応じて、お金の支払いが発生する。

まず、これが「治験データ」捏造が発生する一つの原因ではある。
しかし、その費用の妥当性は病院のIRBで審議されるし、金額も労働の割合から考えたら、そう高い訳では無い(と僕は思う)。

労働が発生したら、それに伴う費用が支払われれる。当然だ。
だから、治験参加者に比例して支払う費用は、データ捏造の一つの原因だとしても、それだけでない。

それよりも、もっと重大な原因が有る。


労働に対する費用は妥当だと、前に書いているが、それは公になっているお金のことだ。
公に対して裏がある。これまた、いろんな業界と政治家の関係を見れば、よく分かる。
名目は接待費、講演料、研究費用など等の名目で、製薬会社から治験実施者の医師に渡ることもやろうと思えば、いくらでもできる。

こういうお金の問題は治験に限らず、有りえる。

治験固有の問題を考えてみよう。

まず、第一に新薬を承認してもらうためには「有効性」が高く、「副作用」が低いもののほうがいいに決まっている。
その判断や、データを集めているのが、治験責任医師や治験分担医師だ。
そこで悪知恵が働く製薬会社(の一部の人)は、お金で「有効性が高く、なおかつ安全性が高く」なるように評価を、医師から書いてもらう。
医師も、「こんな副作用は、臨床ではしょっちゅう出ることだから、治験薬で出たところで、副作用としてあげるほどのもんじゃない」等という気持ちが有るのか、「副作用」の程度を「高度」から「中等度」に変えたりする。

或いは「有効性無し」を「有効性有り」に変えたりする。

また、日常診療の合間にやっている治験なので、取り忘れたデータを、勝手に作ってしまうことも、やろうと思えばできる。

・・・・・・ということもあるだろう。(あくまでも、僕の個人的想像です。)


そして、もう一つの治験固有の問題として「症例数の確保」というのが有る。

新薬の卵である「治験薬」の安全性、有効性を解析するためには、最低、これだけのデータが必要、というのが有る。
それは治験薬の対象疾患にもよってまちまちなのだが、概ね200人とか300人なんていう数の患者さんのデータが必要になる。
逆に言うと、それだけの数が集まらないと、製薬会社は新薬承認申請ができないのだ。
そこで、多少、プロトコル違反でもいいから、とにかく症例数を確保しようなんていう輩が出てくる。

通常は、治験を病院(医師)にお願いする前に、大体、ここでは何例の症例を集められるかを医師と相談しながら決め、それを契約症例数と呼ぶ。

例えば半年で12症例は大丈夫だということで、契約書にも「予定症例数;12人」と書く。
ところが、そう思ったようには集まらない。
すると、製薬会社からプッシュする。また、治験責任医師のボスである教授や部長クラス等からもプッシュするよう製薬会社はお願いする。

プレッシャーをかけられた医師は、せっぱつまって架空の被験者のカルテを作り、架空のデータを作る、ということを考えるのかもしれない。
この時に、研究費や講演料等で金銭的に普段から製薬会社から「援助」してもらっている医師だと、架空のデータを作る可能性が高まる。


また、時には、医師が「これはいい薬だ」と認めながらも、なかなか被験者が集まらない。
すると、1日でも早く、このような新薬を世の中に出したいがために、データの捏造をする可能性も否定できない。



以上から、治験におけるデータ捏造の誘発要因としては以下のことが考えられる。

1)公(裏も含めて)の、お金のやり取りが有る。

2)契約症例数へのプレッシャーが有る。

3)治療と治験の区別がついていない。

4)医師自らが良かれと思ってやる。

等が上げられる。

このような誘発要因から、いかにしてデータ捏造を防ぐか、捏造されたデータを発見するかを考えよう。



まず、第一に治験依頼者が「捏造は許しません、させません、見逃しません」という毅然とした態度表明が必要だ。

適切な労働に対する適切な対価を払う以外は一切、私どもはお金を払いません、ということを明言する。

臨床上、よく有る話だからという言葉に惑わされない。
臨床の現場と治験は違うことを説明する。(GCPに則って、プロトコルに則ってやる。)
それでもダメな場合は、そういう医師に治験を依頼しない。(あとで、ダメージをくらうのは治験依頼者だ。)


次に契約症例数確保のために医師にプレッシャーをかけるだけでなく、治験依頼者側も登録促進案を考えて、治験責任医師を助けてあげる。

大切なことは医師と治験依頼者とのパートナーシップだということ、信頼関係だということを常にモニターは忘れないこと。(普通でも、「お金」がどれだけの信頼関係を失わせているかを考えてみよう。お金は、そういう魔力を持っているのだ。)


もし、上司が捏造を許すような上司だったら、さっさとそんな会社を辞める。(あとで、自分も巻き添えを食うことになる。)


以上のごく簡単な心構えだけで、捏造を防げるとは思わないが、相当減らすことができるはずだ。

きみ/あなたら、できるはず!

posted by ホーライ at 08:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 治験の問題点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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