2005年12月10日

製薬会社とCRO、SMOと治験実施医療機関は正しく機能しているか?

GCPが変わった時に、法律的に初めて、治験業務の委託受託が明記された。(省令GCPの第12条)
最近ではSMOも活躍し始めた。
治験依頼者側のCROと、病院側のSMO。
これらが正しく機能しているか、或いは、どうなったらより良い方向に行くのかを考えてみたい。

前半では現状での問題点を考え、後半は今後のことを考えたい。


まずは治験依頼者とCROの関係から検討してみよう。

治験依頼者からCROへ委託される業務範囲はいろいろ有る。
一般的なものとしては、モニタリングの一部(或いは全部)を委託・受託することだろう。

この時に問題としてあがるのは、どんなことがあるだろうか?

1)委託/受託業務範囲で、お互いに認識が一致していなかった。

2)CROに期待したほどの治験の質・スピードがなかった。

3)委託する側は受託する側の内容を把握するのに苦労する。
(逆の場合もある。すなわち受託した側が、委託者側からの依頼行為が同じ会社なのに、いろんな部門から、それぞれ違うことを要求される。)

以上が、三大問題だろうか。(まぁ、そういうことにして、先を急ごう。)


まず、最初の「1)委託/受託業務範囲で、お互いに認識が一致していなかった。」だ。

これは、『治験依頼者とCRO』という関係だけでなく、ビジネス全般に有り得る話だ。
たとえば、ジャンボジェット機のエンジンのある部品を大手メーカーから、下請け会社へ製造委託した場合でも起こる。

日本は、「契約」にまだ慣れていない社会だと言われている。
それはそれでいいとしても、要は意志の疎通の問題ということになる。

「こちらから要求した事項は、これこれという規格なのに、出てきたものがその規格に合っていない。」
「いや、そちらから依頼された事項は、これこれの場合、こうしろという指示書になっている。」
・・・・・・という話だ。

個人的な約束ごとでも起こる話でもある。
そんな時の解決策は、まずは、コミュニケーションを正確に行うことだ。

例えば、デートの待ち合わせ場所と時間、遅れそうになった場合はどうするかを、あらかじめ両者の間で確認しあう、ということ。

治験に関連する業務のうち、ここの範囲をお宅にお願いします。
ハイ、了解。で、ここの範囲の、この場合、どうしますか?
その時には、こうして迂回してください。

・・・・・・というように、事前に約束事を決め、それを文書の形として残す。これがまず第一歩目だろう。


「1)委託/受託業務範囲で、お互いに認識が一致していなかった。」の続きです。

例えば、事前の連絡不足で双方にとって、驚くことが出てきた場合(委託者側:え!?そんなこともお金を取るの?始めから言ってよ。vs 受託側:え!?それも、うちの仕事の範囲ですか?聞いてませんよ。)、どうするか?

はい、これもデートを例に考えてみよう。

パターン1:どちらかが強引に自分の意見を通す
パターン2:折衷案を出す
パターン3:ここで破談する


まず最悪は、パターン3だ。それまでのデータの移管や処理業務で両社とも大変な作業量になる。

パターン1は、今後のことを考えなくてもいい場合は、有効だ。
たとえば他にもCROが有るから、とか、別にたくさん委託者がいるからとか。
もちろん、パターン1であっても、今回のことを反省して、次からはもっと良いパートナーシップでいましょうよ、となれば、メデタシ、メデタシとなる。

一番、無難な線はパターン2だが、この場合、ポイントは「折衷案を出せるかどうか」にかかってくる。
また、これを機会に両者の関係が悪化して、次回からは委託・受託の関係が切れる可能性もある。
パターン2を選択したとしても、パターン1で述べたように、「今回のことを反省して、次からはもっと良いパートナーシップでいましょうよ」となることを目指すべきだろう。
もちろん、CROの質が委託者の要求レベルに合致していなければ、次から両社の間でのビジネスは成立しないことになる。

ということで、約束事は「約束を結ぶ時」と「約束違反」、「約束事に勘違いが有った」等が起きた場合をよく考える必要がある。

次は「2)CROに期待したほどの治験の質・スピードがなかった」の検討に移ろう。



まずは、委託する時の契約で「2005年3月までにCRFのFixを終了」と有ったのに、なかなか登録が進まなかった場合が、これに当てはまる。(スピードの問題)

また、CROから提出された成果物(モニタリング報告書や総括報告書)が、委託先の期待はずれだった場合も、これに当てはまる。(質の問題)


最初にスピードについて考えてみましょう。

委託先からしてみれば、契約期間内に終わらないと、委託料金がさらに追加される可能性が有るし、自社の予算計画にも狂いが生じるので、大きな問題だ。
うがった見方をすれば、「委託料金を追加したいがためにわざと遅くやっているんじゃないか?と委託先が考える」なんていうことにもなりかねない。
逆に言うと、契約期間内に終わらないのは契約違反だから、ペナルティが受託側に課せられる可能性も有る。

これに対して、受託側(CRO)にすると、「そもそも、被験者候補が少ない施設を選んだ委託先が悪い」とか「じゃ、お宅のモニターがやれば、期間内に終わる自信は有ったのか?」なんていう不満が出てくるかもしれない。

いずれにしても、泥試合になりそうだ。
これまた、両社の間で事前に「要求する質とスピード」を良く協議しておく必要があるだろう。

もし期待以上に早く、かつ質の高い治験をCROが提供した場合は、ボーナスを委託先から出すということも有ってもいいかのしれない。
まぁ、CROにとって、そんなおいしい話が無かったとしても、次のビジネスに繋がることを考えたら、これにこしたことはない。


次に質について考えてみよう。


CROから提出された成果物(モニタリング報告書や総括報告書)が、委託先の期待はずれだった場合が、これに当てはまります。(質の問題)

まずCROのモニターが人手不足で、新人ばかりが担当した、なんていうと、それだけでも委託先は心配になります。
心配になるどころか、教育までしないといけません。一体、CROは教育をしているのか? という不満が出るでしょう。

CRO側から見たら、どの程度の質のレベルを要求しているのか分からない、とか、そこまでの質を要求するの? というようなことを言い出しそうです。

委託側から見た選択肢は・・・・・・

・別のCROにする
・しようがないから、こちら(委託先)が教育する。その代わり、料金を安くしろと交渉する
・もう一切、CROには任せない。やっぱり自社でモニターをいくしかない

・・・・・・くらいでしょうか。


受託側の選択肢は・・・・・・

・質を上げる努力をする
・人手不足なら、リクルートするか、受注仕事を減らす
・委託先との質的要求レベルを事前に確認する

最後の「委託先との質的要求レベルを事前に確認する」は、なかなか具体的には難しいでしょう。どう表現すべきかがキーとなると思います。


最悪なのは、例えばQCを含めて委託したのに、委託元で再度QCをしないといけない、だ。

最高にいいのは、ダブルワーキングしなくてもいいということになるでしょう。

ここで、もう一度、今、検討していることを再確認しよう。
今、検討しているのは、次のことだ。

2)CROに期待したほどの治験の質・スピードがなかった。

この課題のホストは間違いなく委託先だ。
なので、この課題は、受託側から解決しないといけないでしょう。

どうやって解決するか?
それは、また別の機会に。


治験依頼者とCROの間に有る問題として残った最後の課題は次です。

3)委託する側は受託する側の内容を把握するのに苦労する。


この問題をまずCRO側から見ることにしよう。

CROの中にもきっとモニタリングのリーダーがいるはずである。
このリーダーが、部下のモニターをマネジメントできているかどうかに、この問題解決のキーがある。

リーダーがきちんと委託されている治験の業務を完全に把握していれば、委託元は、そのリーダーに電話の一本でもいれればいい。


CRO側から、委託側を見ると、同じ問題が生じている可能性がある。

たとえば、受託業務に対して、モニタリング部門とDM部門から違う指示が出されるというような状態が予想される。
これまた、委託元のプロジェクトマネージャーがしっかりと各部門をマネジメントできているかどうかにかかっている。


以上より、この「3)委託する側は受託する側の内容を把握するのに苦労する。」については、委託元、受託先ともに、優秀なプロジェクトマネジャーが存在し、その間で良好なコミュニケーションがはかられていれば解決するだろう。

もし、この問題が今、一番の問題だとしたら、どちらかのリーダーの力量不足となる。



ここからは、SMOと治験実施医療機関の関係を考えてみよう。

多分、一番問題となっているのは、SMOから派遣されたCRCのことではないだろうか?

常勤でCRCを雇用している病院ならいいが、今回の治験だけとか、期間限定で派遣されるCRCと病院職員との間の対人関係が治験に一番、関係しそうだ。

派遣CRCとしては、一生懸命に治験を促進をしようと、病院の各部署と連携をはかろうとしても、実は、正職員はわずらわしいと思っているかもしれない。

これは何も、CRC業務に関わらず「派遣業」につきまとう運命的な難しさだろう。

さらにCRC業務で問題を大きくするのが、医師と患者さんとモニターの橋渡しをしないといけない、ということだ。
これは、派遣、正職員との区別無く問題として大きい。

正職員のCRCなら、医師とのコミュニケーションはまぁまぁだろうが、患者さんやモニターも相手にしないといけない。
さらに、ここにきて、また派遣の場合は、短期間で医師との良好なコミュニケーション関係を作るということが大きな障壁になる。


以上より、CRCの方は、医薬や治験の専門知識に加えて、コミュニケーション能力やコーディネートスキルを要求されることになる。
従って、CRCに関連する一番の問題点は、派遣も正職員の場合も含めて、いかにして「コミュニケーション能力やコーディネートスキル」をつけるか、教育するかだ。

モニターも同様だが。(ついでに医師も同様だ。)


SMOのその他の業務として問題になりそうなのは何だろう?


SMOの業務としてCRCの派遣の次に大きな仕事としては、治験事務やデータマネジメント(DM)等も有る。
大きなくくりで言うと、CRCの業務としてDMというのは、結構、大切な仕事だ。

CRCの業務としてDM作業は、まだ、あまり一般化していないが、「医師主導型の治験」になったら、相当、大きな仕事になるだろう。

自前のCRCで行くか、SMOに依頼するかは、お金と時間と労力と質のバランスの勝負だ。



さて、今まで「製薬会社とCRO」、「SMOと治験実施医療機関」について、論じてきた。
ここで、最も肝心の「製薬会社とCROとSMOと治験実施医療機関」について、考えてみよう。

「製薬会社と治験実施医療機関」だけでも、イッパイイッパイの問題だらけだったのに、ここに来て、急に四つ巴戦だ。
しかし、数が増えたからと言って、本質は変わらず、結局、最後は人間対人間、組織対組織という話になる。


本来、治験を円滑にするために設立されたCROやSMO。
それが、うまく機能していないのが、現状だ。

製薬会社はCROを選んでおらず、あるCROの何々さん、という個人が欲しい、と言う。
病院もどこのSMOではなくて、あるSMOにいる何々さんなら、いいと言う。

結局は、個人なのだ。
ただし、その個人を育てるのが組織だと言うのならば、組織(会社)の問題だ。

製薬会社も、どこの病院がいい、ではなくて、あの先生ならいい、ということも有る。
病院の医師だって、どこのCROがいいではなくて、あのモニターならいい、ということだ。

しかし、モニターは、結局は会社を背負って病院へ行っている。
そこを考えないといけない。


話は戻るが、本来、治験を円滑にするために設立されたCROやSMO。
それが、うまく機能していないのが、現状だ、という話。

この結果、誰が一番、わりを食うかというと・・・・・・そう! 患者さんです。

一日も早く新しい薬が出ることを待ち望んでいる患者さん。
そのために、治験を円滑に進めないといけないんだよね。(だよね?)


「製薬会社とCROとSMOと治験実施医療機関」の四者が、ああだ、こうだ、と喧嘩をしている(というほどでは無いが)暇が有ったら、患者さんのことを考えましょうね。

自分が癌になったら?
家族が癌になったら?
恋人が癌になったら?

まぁ、癌に限らず、家族や友人が病気になったら、お見舞いに行く。

そして、一日でも早く、病気が治ることを、その人のために祈る。

その祈るが届くといいよね。

他人事ではなく、みんなが自分事として、治験を円滑に進める方法を考えよう。

モニターは、自分がCRCだったら? と考えてみよう。
CRCは自分がモニターだったら? と考えてみよう。
治験責任医師は、自分が治験参加者だったら? と考えてみよう。


以上、「製薬会社とCRO、SMOと治験実施医療機関は正しく機能しているか?」の考察は終り。
posted by ホーライ at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 治験の問題点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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